切妻屋根の農家住宅と農地が点在する、南側が幹線道路への抜け道になっている比較的交通量のある道路に面する敷地。特にプライバシーの確保を強く希望されるご夫婦のために、周りに対してただ閉じるだけでなく、明るく開放的な住空間を目指した。
元農地の比較的広い敷地を塀ですべて囲みこむのは費用が掛かりすぎてしまうので、建物の形態とアプローチの軸線に建てられた最小限のコンクリート壁により、四方からの視線を止められるよう計画。周辺の住宅がほぼ切妻屋根の農家住宅が建っているところから切妻屋根の建物が敷地を取り囲むように配置し、その建物とコンクリート壁に囲まれた庭に向けて各室を配することで、それぞれに風や光が行き交い、外観からは想像できない広がりある内部空間を実現した。また、視線の抜けや角度の振れにより家族の気配を緩やかに感じ取ることができるよう計画した。
屋内物干空間の充実、サンルームやウォークインクロークを近接させることで、洗濯家事動線の集約を図り、キッチンと玄関の間に収納力十分のパントリーを配するなど、共働きご夫婦のための家事負担軽減を実現した。
玄関ホールを抜けて現れるダイニングキッチン。テーブルと一体化した3.8mのキッチンカウンターは、日ごろの家事動線を考慮しつつ、家族や友人が大勢集う際にも庭を眺めながら気持ちよく食卓を囲む場所になるように細部のデザインもこだわり提案した。
撮影:穂坂昭