同一敷地内に両親と娘夫婦の住宅を同時に計画する利点を生かし、両世帯間のプライバシーを守りつつ良好な関係を築く距離感や、お互いの生活スタイルに合わせた計画をした。
南北に細長い計画地を短辺方向ではなく斜めにコンクリート塀を配すことで、それぞれの敷地の奥行きと開放感を感じさせるよう分割。南側道路より親世帯、北側道路より子世帯のアプローチをにすることで普段の動線を分け、プランを点対称に配することで両世帯が正対する部分を無くし、お互いの視線が交差しないようにするなど、両世帯のプライベートを配慮。また、くの字型の形態を点対称にすることで一つの庭を囲むような家族だけの大きな庭を確保することができ、広い庭を遊びまわる子供たちの姿を見守ることもできる。孫たちが庭を介して祖父母世帯の家に安全に行き来できるなど、一つの庭を二つの家が共有し家族をつなぐ提案とした。
仕事・子育てがひと段落し、家時間が長くなることが予想され、ご主人はガーデニング・家庭菜園・書道、奥様は手芸・裁縫がそれぞれ達人級の趣味を持つため、お互いの時間をどのように家で過ごすかが提案の肝となった。LDKと小上がりの和室に一つの空間を共有しながらもそれぞれの居場所を用意し、程よい距離感で生活できるように提案した。
庭に生かせそうな既存の植物や石を再利用したり、既存住宅の解体時に出た大黒柱や梁などの木材を新たな住宅の神棚や飾り棚に転用することで、思い入れのある住宅の記憶と風景を継承する提案ともなった。
撮影:穂坂昭